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井上晴雄。


作品紹介
砂丘浪漫    (水彩画)


 夕刻、西陽が差し込み、砂丘はキラキラと輝きはじめた。向こうの方に、ラクダのシルエットが、ゆったりと横切っていく。
 鳥取砂丘は、日本海沿岸に広がる砂礫地帯である。中国山地の花崗岩が風化して、卓越風で流されて形成したといわれている。すり鉢状の砂の窪みは、最大で90mもの高低差に及ぶ。
 砂丘は遠望すると、なだらかで美しい。しかし、いざ歩行するとなると、実に困難な場所である、砂に足を踏み入れれば、もう片方の足が埋まり、引き抜こうとすると、また他方の足が砂の中にめり込む。先の風景はすぐそこに見えているのに、なかなか前に進めない。小高い丘を越えたかと思うと、また窪みに入り、また次の丘が、目の前にそびえ立っている。
 砂丘を歩く。それは、人が生きるということにも似ているような気がする。ひとつのハードルをクリアしても、また新たな試練が待ち構えている。その次にはまた違う関門が聳えている。その繰り返しである。得てして、生きるとは、辛く厳しいものだといえるかもしれない。そう考えたとき、いかに先を急ぐかよりも、ときには立ち止まりながら、その中に、たくさんの幸せを見つけていく方が、賢明な生き方ではないかと思った。砂丘を越えきったら、その先には、紺碧の日本海が一面に広がっている。潮風が心地よく吹き抜ける美しい浜辺。私たちは、砂丘の先に、何を夢見て、今日の一歩を進めるだろうか?

販売可
160000円

 
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